なぜ「候補先選定」でM&Aの成否が決まるのか:評価が割れる前提で考える

はじめに

M&Aでは「どの企業に事業や会社を承継してもらうか」によって、結果が大きく変わります。
同じ会社でも、候補先が変わるだけで評価や条件の出方がまったく異なることは珍しくありません。

にもかかわらず、実務では「まずは広く候補を出す」といった進め方が先行し、肝心の候補先設計が後回しになる場面も見受けられます。
実際には、候補先選定の質が、その後の交渉の主導権や最終的な着地を左右します。


なぜ評価が割れやすいのか

評価が割れる最大の理由は、企業ごとに

・既存事業との親和性(シナジー)
・統合後の成長シナリオ
・コスト削減やクロスセルの余地
・意思決定のスピードや実行力

が異なるためです。
つまり、「どの企業が承継主体になるか」によって、同じ対象でも見え方が変わります。


候補先選定は「3つの視点」で整理する

候補先を検討する際は、少なくとも次の3つの視点で整理するとブレが減ります。

① 事業上の親和性が高い企業
販路、顧客基盤、技術、供給網などが近く、統合後の絵が描きやすい企業です。

② 戦略としてM&Aを位置付けている企業
M&Aを継続的に活用している企業は、検討の進め方が比較的スムーズです。

③ 統合(PMI)の実績がある企業
統合後の運営まで見据えた意思決定ができる企業は、条件面でも安定しやすい傾向があります。


「数を増やす」より「選定の精度を上げる」

候補を増やすこと自体が目的になると、情報管理の負荷が上がり、かえって進行が不安定になることがあります。
重要なのは、検討の確度が高い候補に絞り、比較可能な状況を作ることです。

そのために、事前に次の点を整理しておくと効果的です。

・譲れない条件(雇用、ブランド、運営体制など)
・譲歩可能な条件(スキーム、時期、役員体制など)
・候補先に求める優先順位(価格、確度、スピード、相性)


候補先設計が「交渉力」を作る

適切な候補先を複数用意できれば、比較材料が生まれ、条件交渉でも主導権を維持しやすくなります。
逆に、候補が限られると、交渉の後半で条件が揺れた際に、打ち手が少なくなります。


まとめ

M&Aの結果は、プロセスが進んでからではなく、開始前の候補先設計で大きく決まります。
候補先の整理や進め方で迷いがある場合は、早い段階で論点を整理することが重要です。


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