【M&A事例ピックアップ】大和ハウス工業による住友電設の買収

要旨(結論)

本件は、公開買付と後段手続を組み合わせて完全子会社化した事例です。価格水準だけでなく、特別委員会を軸に提案が複数回更新されたプロセス、および買手の戦略(大型案件対応、施工体制強化、海外)を読み解くと学びが得られます。

この事例のポイント

  • 取引設計:公開買付の後に後段手続を行い、最終的に完全子会社化
  • プロセス:2025年9月から10月にかけて条件が段階的に更新
  • 背景:買手の受注領域拡大と体制強化、売手の資源配分の文脈で整理できる

案件早見(主要数値のみ)

買手大和ハウス工業
対象会社住友電設
売手(親会社)住友電気工業
手法公開買付 → 後段手続(完全子会社化)
公開買付価格9,760円
買付期間2025年10月31日〜12月15日(結果公表:12月16日)
買付予定数上限なし、下限 388万株(11.03%)
公開買付対価約1,694億円(見込み)
自己株式取得6,877円、1,782.8万株、約1,226億円
最終的な現金アウト約2,920億円(目安)

注:親会社は公開買付に不応募で、後段の自己株式取得で売却する設計です。実務上は税務上の取扱いも踏まえ、公開買付への応募と実質同等の手取りとなるよう条件設計が行われることがあります。

案件概要

以下の図では、取引スキームと主要条件(価格、株数、対価)の関係が整理されています。まずは全体像をつかむ目的で参照してください。

支援体制と交渉経緯

次の図は、当事者ごとのアドバイザー体制と、提案が更新された時系列をまとめたものです。 価格そのものよりも、提案の更新回数と意思決定の節目(特別委員会、取締役会)に注目すると、プロセスの説明可能性を読み取りやすくなります。

読みどころ

  • 提案の更新がどのタイミングで起きたか
  • 特別委員会が増額要請を行っている点
  • 答申書提出と取締役会決議という節目

価格水準(プレミアム)の整理

次の図は、公開買付価格9,760円が、直前の株価水準や過去平均と比べてどの程度の上乗せとなるかを示しています。 数値の羅列ではなく、「どの基準に対してどの程度上乗せか」を短く押さえると読みやすくなります。

押さえるポイント

  • 前営業日終値(2025年10月23日:7,190円)対比:+35.74%
  • 過去1か月平均(6,732円)対比:+44.98%
  • 過去3か月平均(6,759円)対比:+44.40%
  • 過去6か月平均(6,405円)対比:+52.38%

注:プレミアムは「どの期間の平均を基準に置くか」で見え方が変わります。図の数字は、基準の違いを並べて理解する用途に適しています。

(想定)関係当事者の狙いと背景

次の図では、買手側の狙い(大型案件対応、施工体制の強化、海外展開)と、売手および対象会社側の事情(資源配分、関係維持の考え方)、さらにシナジーの整理がまとめられています。

整理

  • 買手(大和ハウス工業):データセンターや半導体工場など大型案件への対応力を高める意図
  • 買手(大和ハウス工業):施工力の内製化を進め、提案から施工、運用までの体制を強化する意図
  • 買手(大和ハウス工業):東南アジアを中心とした海外展開を加速する意図
  • 売手(住友電気工業):エネルギー、情報通信、モビリティ等の成長投資に資源配分を寄せる文脈
  • 対象会社(住友電設):売却後も業務提携関係を維持する考え方

実務の示唆

  • 手続設計:公開買付と後段手続を組み合わせる場合、親会社・少数株主など当事者ごとの立場に応じて、売却方法や説明の筋道をそろえる必要があります。
  • 条件設計:公開買付と自己株式取得が並走するケースでは、価格が二段階になることがあります。その場合、関係者間の公平性や経済条件の整合について、資料上での説明が重要になります。
  • プロセス:提案が複数回更新される案件では、更新の履歴や特別委員会の関与、取締役会決議などの節目が「説明可能性」を支える材料になりやすいです。

補足(よくある疑問)

・親会社が公開買付に応募しない設計は、何を意図している?
親会社の売却を公開買付ではなく、後段の自己株式取得で行う前提にしておくことで、手続全体の整合を取りやすくなる場合があります。
・公開買付価格と自己株式取得価格が異なるのはなぜ?
手続の性質が異なるため、価格が一致しない設計はあり得ます。重要なのは、関係者間の公平性や経済条件の整理が説明されているかです。
・提案が複数回更新されるプロセスで、何を見るべき?
価格水準だけでなく、提案更新の根拠、第三者性のある枠組みの関与、および意思決定の節目が記録として残っているかを確認します。

出典

本記事は、当事者が公表する一次資料(適時開示、公開買付関連書類、意見表明等)をベースに整理しています。補助的に、報道・解説記事等を参照しております。

以上

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