クローズド・オークションは、候補先を一定数に限定しつつ、比較可能な状況を作る進め方です。
情報管理に配慮しながら条件提示を受けられるため、事業承継の案件でも採用されることがあります。
一方で、進め方を誤ると、後工程で条件の再調整が増えたり、交渉の主導権を持ちにくくなったりすることがあります。
本記事では、1次入札からDD後の最終提示まで、実務での進め方を整理します。
クローズド・オークションの全体像
大まかな流れは次のとおりです。
- 候補先の選定(一定数に限定して打診)
- 事前情報の提示(ティーザー/概要資料)
- 1次入札(経済条件・主要条件の提示)
- 上位候補の絞り込み
- DD(調査:1社に限定されるとは限らず、複数社で進む場合もある)
- 最終提示(価格・条件の確定)
- 最終契約・クロージング
ポイントは、後工程に進むほど「手戻り」のコストが大きくなるため、早い段階で重要論点を揃えることです。
事前準備:最初に整理しておくこと
クローズド・オークションでは、複数候補の条件を正しく比較するために、情報の出し方や内容に一貫性を持たせることが重要です。
候補先ごとに出す情報や前提がばらつくと、提示条件の比較が難しくなり、後工程で認識差の調整が増えやすくなります。
最低限、次を先に整理しておくと進行が安定します。
- 譲れない条件(雇用・従業員の処遇、運営体制、ブランド、取引先対応など)
- 譲歩可能な条件(取引スキーム、時期、役員体制など)
- 経済条件についての考え方(希望と現実の幅、優先順位)
- スケジュール感(いつまでにどこまで進めたいか)
ここが曖昧なまま進むと、後工程で論点が増えやすくなります。
1次入札で確認したいこと(経済条件だけではない)
1次入札では、単に価格レンジを見るだけではなく、後工程で大きな認識差になりやすい項目も合わせて確認します。
可能な限り、一本値での提示が望ましいですが、難しい場合でも「前提をそろえた上で比較できる」形にすることが重要です。
確認したい主な項目は次のとおりです。
- 経済条件(可能な限り一本値、前提条件、調整項目の考え方)
- 取引スキーム(株式/事業、対価、支払条件、必要な手続き)
- その他条件(重要条件、制約条件、前提の置き方)
- 取引成就後の想定運営体制(責任者、権限、PMIの考え方、組織体制)
- 想定スケジュール
- 相手方の資金調達方法(自己資金、銀行借入等)
- 相手方の意思決定プロセス(決裁プロセス、体制)
- 独占交渉の考え方(求めるか、求めるならタイミングの考え方)
1次入札は「次に進む相手を選ぶ材料」なので、粒度が粗くても、重要論点が書かれていることが大切です。
上位候補の絞り込み方(経済条件だけで決めない)
上位候補を選ぶ際は、経済条件以外の要素が後で効いてきます。
- 条件の安定性(後から大きく変わりにくいか)
- 意思決定の確度(決裁の通し方、必要時間)
- 取引成就後の運営イメージ(体制や方針)
- 情報管理への配慮(関係者への対応)
- 当該候補先の属性(事業会社、ファンド等)
事業承継では特に「条件の中身」が結果を左右しやすいため、経済条件だけで機械的に絞り込まないことが重要です。
また、最終局面での選択肢を確保する観点から、候補先は1社に限定せず、たとえば事業会社とファンドなど属性の異なる候補を一定数残して次の工程に進める、という考え方も有効です。
DDで起きやすいこと
DDは、相手側がより詳細な情報を確認する工程ですが、売手側にとっては負担が大きい工程でもあります。ここで起きやすいのは次の2つです。
- 追加資料が増え、対応が長引く
- 調査の結果として条件の再調整を求められる
これを抑えるために、DD前に重要論点を整理しておき、情報の出し方や範囲、進め方をあらかじめ共有しておくと進行が安定します。
また、DDを複数社で進める場合は、同一の前提・同一の水準で比較できるよう、進行管理がより重要になります。
DD後の最終提示(最終条件の決め方)
最終提示では、経済条件だけでなく、条件を一体で見ます。
- 最終の経済条件と調整条項(運転資本、ネット有利子負債など)
- 表明保証、補償、リスク分担
- 雇用・従業員の処遇、運営体制の取り扱い
- スケジュールと前提条件
この段階で「条件が合わない」となると手戻りが大きいため、1次入札の段階から重要論点を確認しておくことが効きます。
まとめ
クローズド・オークションは、情報管理と比較可能性を両立しやすい進め方です。
後工程での手戻りを減らすためには、事前準備で論点を揃え、1次入札で経済条件以外も確認することが重要になります。