業界別M&Aレポート 第1回|情報確認基準日:2026年10月7日
本シリーズの視点
本シリーズでは、BtoB領域のモノづくり企業のM&A・資本提携の事例を起点に、企業がどのような技術、製造基盤、顧客接点を取得し、事業を広げているかを考察します。その背景にある市場・技術の変化を整理し、原料・中間体・加工技術・供給機能に着目して、企業間の補完関係を読み解きます。
第1回は、フォトレジストを支える上流材料を扱う化学関連企業を取り上げます。ポリマー製造基盤の取得、モノマーと感光材の協業、既存資本関係の強化、異なる合成技術の取得という取引を比較します。完成レジスト側の再編も参照し、各取引が事業拡張のどの課題に対応しているかを考察します。
経営者の皆様へ
半導体材料分野では、材料の性能だけでなく、顧客が求める品質を維持し、量産工程へ安定的に供給する能力が事業の競争力を左右します。本稿では、フォトレジストとその原料・周辺材料を対象に、買収・資本提携でどのような機能が取得・補完されているかを整理します。
本稿の要点
① 上流材料の買収・提携は、製品の追加とともに、顧客の要求を試作・評価・量産へつなぐ能力を補います。DIC/PCAS Canadaは製造・品質基盤、大阪有機化学/三宝化学研究所は共同設計、本州化学工業の非公開化は開発・投資体制を補う事例です。
② 完成レジストメーカーでは、原料企業を買収して上流機能を取り込む動きと、少数出資や既存の株式保有を通じて原料企業との関係を維持・強化する動きが併存しています。企業全体を取得する方法と、供給・開発関係を資本で支える方法では、経営への関与の範囲や、対象企業の既存顧客との関係に与える影響が異なります。
③ 技術の取得後にも、外部連携や追加投資を通じて事業を広げる動きが見られます。三菱ケミカルによるGelest買収後のドライレジスト原料協業、JSRによるInpriaの買収後の特許連携が、その例です。取得対価に加え、顧客評価・量産体制に必要な資金と期間まで検討することが重要です。
半導体材料の中での位置付け
半導体材料には、土台となるウエハー、回路をつくる工程の材料、チップを組み立てる材料があります。フォトレジストは、回路等の形を描くリソグラフィ工程で使われる材料です。今回は、その製品を構成する原料と、原料を製造する企業を取り上げます。[19・20]
シリコン・SiC・GaN等
ウエハー/エピタキシャル材料
成膜・リソグラフィ・エッチング・洗浄・CMP等
封止・接着・基板・めっき等
モノマー・樹脂・感光性成分・添加剤・高純度溶剤等
本稿の対象領域
中心領域は、レジスト用樹脂・モノマー・感光性材料・光酸発生剤(PAG:光を受けて酸を発生する成分)・金属酸化物レジスト(MOR:金属を含む化合物を用いるレジスト)用原料です。完成レジストは原料の需要側として、成膜材料・プロセス薬品は隣接領域として参照します。
企業名は本文・表を通じて「株式会社」等を省略しています。海外企業の所在国は取引一覧に併記しています。
各節の「公表事実」は企業等の一次資料に基づきます。「本稿の考察」と「経営上の検討点」は、公表情報に基づく解釈・検討仮説です。本文の出典番号から、関連する出所一覧へ移動できます。
フォトレジストの役割と原料
フォトレジストは、光による反応で現像液への溶けやすさが変わる感光性材料です。ウエハー上に膜を形成し、露光と現像によって必要な形を残します。その形を利用して下の膜を削るなどの加工を行い、回路を形成します。[19]
薄い膜をつくる
光で反応させる
露光部分を除く
下の膜を加工する
レジストを除く
緑:フォトレジスト/青:加工対象の膜/灰:ウエハー。寸法・膜厚は実際の比率とは異なります。
樹脂等をつくる原料
↓
樹脂・ポリマー
膜形成・溶解性等を担う
光による反応を制御する
反応・塗布・溶解を調整する
配合・精製・ろ過・性能評価/顧客の製造工程への適合
工程評価・採用・量産使用
MORは有機ポリマー中心の材料系とは構成が異なります。金属含有材料・原料等の設計・合成・管理も検討対象となり、完成レジスト側の材料設計につながります。
市場の大きさと原料企業の事業機会
完成レジスト市場の拡大は上流材料への需要を支えます。ただし、どの原料が、どの用途・工程で使われるかによって、原料企業の事業機会は異なります。
SEMIの2026年5月公表資料では、2025年の世界の半導体材料市場は732億米ドル(前年比6.8%増)、前工程材料は458億米ドル(同5.4%増)でした。フォトマスク・フォトレジスト・関連材料等のリソグラフィ材料は2桁成長と説明されています。ただし、この公開発表にはフォトレジスト単独の金額はありません。[85]
フォトレジスト単独について、SEMIの2025年9月資料は2026年に約30億米ドルと予測しています。[78]
この資料では、フォトレジストと、現像液・剥離剤・反射防止材等の関連材料を別市場として扱っています。モノマー・ポリマー・PAG等の原料市場を、完成レジスト市場に加算すると取引段階の重複が生じます。完成品の市場規模から原料企業の売上を直接推計せず、顧客の配合・調達範囲・内製比率と採用工程から積み上げます。[78]
市場の成長を事業計画へ結び付ける
微細化による材料単価の上昇、使用工程の増加、ウエハー投入量の増加は、それぞれ需要に異なる影響を与えます。原料の配合量や顧客による内製化が変われば、完成レジスト市場と同じ率で原料売上が伸びるとは限りません。新材料の開発余地と、既存材料の量産供給の拡張余地を分けて検討することが、買収・設備投資の対象を絞る際に有用です。
設備投資の規模も事業機会を理解する手掛かりです。ADEKAはMOR用金属化合物の専用プラントに32億円、PAG能力増強に約10億円を計画しています。技術の取得と量産投資は別の支出であり、原料事業への展開では両方を資金計画へ織り込む必要があります。[10・11]
原料企業の売上機会を積み上げる例
完成レジストの市場総額より、供給できる顧客・製品を起点に見積もる方が、原料企業の事業計画へ結び付けやすくなります。以下は計算方法を示す仮定例であり、市場推計や業界平均ではありません。
| 計算要素 | 仮定 | 実際の検討で確認する情報 |
|---|---|---|
| 対象顧客・製品群の年間売上 | 100億円 | 供給可能な用途・工程に限定。顧客全社売上は使わない。 |
| 当該原料の購入額/完成品売上 | 10% | 当該原料の使用量×調達単価。全原料費率とは区別。 |
| 当該原料の外部調達比率 | 80% | 顧客の内製・外部購入とその変更計画。 |
| 外部調達額に対する自社供給比率 | 25% | 製品・拠点の認定、競合供給者、供給能力。 |
| 自社の年間売上機会 | 2億円 | 100億円×10%×80%×25%。本稿計算。 |
感応度:原料購入額比率を5%・10%・15%とすれば、他の仮定が同じ場合の売上機会は1億円・2億円・3億円です。
この売上機会から、原料費、精製・分析・品質保証費、認定費用と増設費を差し引いて採算を評価します。顧客評価が未了の場合は、採用時期・採用確率別のシナリオとして扱い、既存売上に加算する確定額とはしません。
1 技術動向と材料の採用条件
1.1 微細化と上流材料の開発機会
High-NA EUVが求められる背景
半導体の性能を高める方法の一つは、回路を細かくし、限られた面積に多くの機能を集積することです。微細な形状を従来の露光装置でつくる際には、パターンを分割して複数回の露光・加工を行う場合があります。High-NA EUVは解像度を高め、一度の露光で形成できる微細パターンの範囲を広げることで、工程の簡素化を目指す技術です。[1・54]
EUV(極端紫外線)は波長13.5nm(ナノメートル。1nmは10億分の1m)の光を使います。High-NA EUVも波長は同じで、光学系の開口数(NA)を0.33から0.55へ高めます。開口数は光学系が取り込む光の角度の広さを表す指標で、大きいほど細かな形を描けます。短い波長と大きな開口数が解像度を高めるため、High-NAはEUVの微細加工能力をさらに引き上げる技術です。[1]
量産導入時期は各社の工程計画によって異なります。2026年9月のASML・TSMC共同発表では、TSMCは2030年から先端ノード量産での使用を意図していると説明しています。[2]
本稿の考察
材料企業の事業計画では、顧客工場へのHigh-NA EUVの導入計画、材料の評価・認定、量産での採用時期と使用工程数を確認する必要があります。技術開発の進展が原料売上に結び付く時期は、顧客による工程への導入と材料の採用判断に左右されます。
薄い膜で性能を確保するための開発課題
開口数を高めると、焦点が合う厚み方向の範囲(焦点深度)が狭くなります。また、細く背の高いレジスト形状は、現像後の洗浄・乾燥等で倒れたり互いに付着したりする「パターン倒壊」が起きやすくなります。このため、薄い膜でも形を形成し、その形を下の膜へ加工で移す性能が必要です。レジスト、下層膜、エッチング工程を組み合わせた開発が進んでいます。[52・54]
本稿の考察
上流材料企業にとっては、樹脂・PAGの分子設計、金属化合物の合成、精製や不純物・粒子管理など、自社の技術を材料設計へつなぐ開発余地があります。参入機会を事業にするには、完成レジストメーカー等との評価関係と、試作から量産品質へ移行する能力が必要です。2章の取引事例では、各社がどの機能を外部から取得・補完しているかを確認します。
1.2 CARとMORの開発動向
化学増幅型レジスト(CAR)は、PAGから生じた酸を使い、樹脂等の反応を進める材料方式です。PAGを樹脂などと一緒に配合する設計に加え、樹脂に化学的に結合させる設計もあります。
MORでは金属を含む材料系を用い、EUVを吸収しやすいことなどが開発上の特徴です。原料企業の開発領域も、樹脂・PAGから金属化合物の設計・合成へ広がります。[10・22・31]
ADEKAはCAR向けPAGとMOR用金属化合物を展開し、2025年にMOR用原料の専用プラント、2026年にPAGの能力増強を公表しました。異なる方式に並行して投資している事実は、材料企業の事業拡張を考える際の参考になります。[10・11]
本稿の考察
材料の採用には、解像度、感度、欠陥管理、加工耐性、顧客工程への適合性に加え、材料価格と工程全体のコストが関係します。露光時間、工程数、歩留まり(良品の割合)、設備投資・運転費用を含めて比較する必要があります。原料企業には、性能と採算の両方を満たす開発・供給機能が求められます。
ベルギーの半導体研究機関imecは2026年9月、CARを用いたHigh-NA EUVの1回の露光で、22nmピッチ(隣り合う線の繰返し間隔)の線状パターン等を形成した研究成果を公表しました。材料供給企業等とCARおよび露光・エッチング工程を調整した成果であり、CARがHigh-NA EUVの一部の回路層に適用できる可能性を示しています。[52・53]
原料企業には、樹脂・PAGの改良によるCARの性能向上と、MOR用原料など新しい材料への展開の両面で、技術開発と事業拡張の余地があります。
上流原料の需要を左右する要因
原料の需要は、顧客が開発・採用するレジストの露光方式、配合、使用量によって変わります。上流企業が新しい用途へ展開するには、完成レジストメーカー等の要求を知り、試作品を評価してもらえる関係が必要です。直接取引に加え、商社や共同開発先を介した接点も考えられます。
本稿の考察
技術を保有するだけでなく、顧客の開発テーマと必要な品質・納期を把握し、試作、評価への対応、量産化を継続できる体制が事業化の条件になります。こうした顧客接点や開発対応力を取得・補完することも、M&Aや提携を考える理由になります。
1.3 顧客の設備投資と採用判断
材料性能と顧客側の設備投資
新しい原料やレジストの性能が優れていても、顧客が採用するには、自社の設備・工程に適合することが必要です。完成レジストメーカーで配合・ろ過・充填設備等の改造や専用化が必要になる場合と、半導体工場で塗布・現像・成膜等の工程を変更する場合では、投資主体と採用判断が異なります。
本稿の考察
顧客が設備投資を要する場合には、材料性能の改善による便益を、投資額、運転費用、立上げ期間、工程変更に伴う評価・認定の負担と比較します。既存設備を使える競合材料との比較も必要です。採用時期は、設備更新や新工場の計画と整合するかによって変わり得ます。
装置・工程の変更を伴う例
Lam Researchのドライレジストは、液状材料を回転塗布する方法とは異なり、真空中で気相原料から膜を形成します。同社は成膜・現像の装置を提供しており、材料と装置・工程を組み合わせて導入する例です。[69]
本稿の考察
上流企業の事業計画や買収評価では、原料の性能・供給能力に加え、誰がどの設備投資を行い、いつ評価・採用を決めるかを確認する必要があります。顧客との開発・評価関係には、この導入条件を早い段階で把握し、材料開発へ反映する意味があります。
2 M&Aと資本提携事例
2.1 上流材料に関係するM&Aと資本提携
上流材料に関係する取引6件を、取得・補完する機能、持分・手法、価格条件で整理します。続く7件は完成レジスト・関連製品と隣接領域の取引です。3章では、各取引の狙いと取得後の展開を考察します。
| 時点・買手/対象 | 取得する機能 | 持分・手法 | 価格条件 | 事業上の位置付け |
|---|---|---|---|---|
| 2017年4月・10月 富士フイルム/和光純薬工業 | 上流機能の取込み | TOB後93.50%→三角株式交換で100% | TOB買付対価:約1,436億円(本稿計算。完全子会社化総額とは別) | 完成レジスト側がPAG・ポリマー等を含む企業を取得。試薬・ヘルスケア等も対象。[31・58・59・82] |
| 2020年10月 三菱ケミカル/Gelest(米) | 合成技術の拡充 | 米子会社経由で親会社の全株式 | 価格記載なし | Siケミカル・金属化合物等の合成技術。取得後にドライレジスト原料協業。[60・61・62] |
| 2021年 三養グループ(韓)/NC Chem(韓) | 複数原料事業への展開 | 企業買収。取得持分は確認資料に記載なし | 価格記載なし | 現在はポリマー・PAG・モノマー等を展開。[63・64] |
| 2021年5月TOB開始 三井化学・三井物産/本州化学工業 | 開発・投資体制の強化 | 共同TOB・非公開化。現在51%/49% | TOB 1株1,830円 | 既存株主が関与を強化。対象はレジスト原料を含む化学企業全体。[55・56・57・76] |
| 2023年6月 DIC/PCAS Canada(加) | 製造・品質基盤の取得 | 全株式取得 | 価格記載なし | フォトレジストポリマーの低金属・高純度製造と量産ノウハウ。[5・77] |
| 2026年6月 大阪有機化学/三宝化学研究所 | 補完技術の組合せ | 議決権33.8%取得・業務提携 | 価格記載なし | モノマー・感光材等の共同設計、精製・金属管理技術の連携。[8] |
価格記載なしは、本稿の確認資料に価格がないことを示します。非開示を企業が明示した場合とは区別しています。価格は対象範囲と定義が異なり、単純な大小比較はできません。
2.2 完成レジストと隣接領域の再編
完成レジスト側と隣接領域の取引
| 時点・買手/対象 | 取得する機能 | 持分・手法 | 価格条件 | 取引の特徴 |
|---|---|---|---|---|
| 2008年 日本化薬/MicroChem(米) | 構造形成用材料 | 企業買収 | 価格記載なし | SU-8等の感光性材料事業を取得。[43・67] |
| 2014年5月 Merck(独)/AZ Electronic Materials(英国上場) | 電子材料の拡張 | 買収完了時81.3%。残余株式取得へ | 現金買付提案総額約16億英ポンド | リソグラフィを含む電子材料事業を取得。[65・66・84] |
| 2021年11月 JSR/Inpria(米) | MOR技術の取得 | 既存出資→完全子会社化 | 合意事業価値5.14億米ドル | 追加取得分の支払額とは異なる。[3・4・70] |
| 2023年10月 富士フイルム/Entegrisのプロセスケミカル事業(米) | 隣接工程への拡張 | 同事業を担うCMC Materials KMGの全株式取得 | 買収資金約7億米ドル | 洗浄等の工程薬品事業を取得。[9] |
| 2024年6月 JIC系ファンド/JSR | 所有構造・投資体制 | 非公開化 | TOB 1株4,350円 | 国内材料業界の再編・構造改革支援を掲げる。[68・71・83] |
| 2024年8月 JSR/ヤマナカヒューテック | 成膜材料への拡張 | 全株式取得 | 価格記載なし | CVD・ALD用原料事業を取得し、成膜材料へ展開。[12・13] |
| 2025年2月 東京応化工業/MRT(独) | 用途・欧州接点の拡張 | 全株式取得の契約・子会社化 | 価格記載なし | 感光性材料等と技術・顧客接点の補完。[6・7] |
取引金額について
公表された取引金額を見る際は、企業全体の取得、特定事業の取得、既保有分を除く追加取得のどれを対象とした金額かを確認する必要があります。
和光純薬工業の約1,436億円は、TOB価格8,535円に実際の買付株数を乗じた金額です。発表時の予定買付代金は約1,547億円であり、TOBに先立つ和光による自己株式取得と、その後の残余株式の株式交換は別の取引です。[82・86・87・88]
本州化学工業のTOB価格は1株1,830円で、当初発表前日の2020年11月10日終値1,290円に対するプレミアムは41.86%です。これは企業全体の非公開化に関する株式価格であり、レジスト原料事業の倍率ではありません。[76]
Inpriaの5.14億米ドルは合意事業価値で、追加取得分の支払額とは異なります。富士フイルムによるEntegrisのプロセスケミカル事業の取得は、同事業を担う子会社CMC Materials KMGの全株式を取得する方法で行われ、買収資金は約7億米ドルでした。[9・70]
買収価格の妥当性を検討する際は、対象事業の正常収益、純有利子負債、設備更新や認定・増産に必要な追加支出を確認します。複数事業を含む企業全体の取得価格やEBITDA倍率を、そのままレジスト原料事業の評価へ当てはめることはできません。
取引事例の選定範囲
本稿では、フォトレジスト原料を扱う企業の買収・資本提携のうち、公表資料から取引の対象と狙いを把握できる事例を取り上げています。企業全体の買収、既存株主による非公開化、少数出資の違いを踏まえ、取得する製品・技術や経営への関与の範囲を比較します。
日本化薬によるMicroChemの取得(2008年)とMerckによるAZ Electronic Materialsの取得(2014年)は、両社の現在の感光性材料・電子材料事業につながる取引として掲載しています。
一般的な化学企業の買収でレジスト関連機能を確認できないもの、電子材料全般の提携で原料・材料との接点が明らかでないものは本稿の比較対象から外しています。既存の株式保有と新規取得は3.5節で別に扱います。
3 取引事例から考える事業拡張
製品・製造基盤の取得
DICによるPCAS Canadaの取得と三養グループによるNC Chemの取得は、買収を通じてレジスト原料の製造・供給機能を新たに取り込む事例です。製品に加え、品質管理と量産供給の基盤も取得しています。富士フイルムによる和光純薬工業の取得では、完成レジストを扱うグループが上流材料機能を取り込みました。[5・31・58・59・63・64]
補完技術・材料方式の取得
大阪有機化学と三宝化学研究所の提携は、異なる原料・感光材の技術を組み合わせる事例です。三菱ケミカルによるGelestの取得は合成技術の拡充、JSRによるInpriaの取得はMORという材料方式の獲得として整理できます。[3・4・8・60・61・62]
開発・投資体制の整備
三井化学と三井物産による本州化学工業の非公開化は、既存の資本関係を強め、中長期の開発・設備投資を進める体制を整えた事例です。既存技術を事業として育てる意思決定と支援体制に着目できます。[55・56・57]
用途・地域の拡張
東京応化工業によるMRTの取得は、欧州の顧客接点と提供領域の拡大を目的とした事例です。既存製品を新しい地域・用途へ展開する際には、対象企業の顧客基盤や研究機関との開発関係も取得価値になります。[6・7]
3.1 製造基盤の取得と技術の補完
製造・品質基盤を取得する:DIC/PCAS Canada
公表事実:DICは2023年6月にPCAS Canadaの全株式を取得しました。対象会社は半導体用フォトレジストポリマーを製造し、高純度・低金属含有量の材料供給と量産技術を強みとしていました。[5]
本稿の考察
取得後、旧PCAS CanadaはInnovation DIC Chimitroniques(IDC)へ改称され、DICは設計から試作・量産までの受託体制を案内しています。DICの設計技術と、取得した高純度・低金属の製造基盤を組み合わせる展開です。[77]
経営上の検討点
上流ポリマー事業では、合成処方に加え、量産時の金属・不純物管理、品質記録、顧客の評価関係が取得価値になります。既存の化学技術を半導体材料へ展開する企業には、これらの基盤を自社で構築する時間と、買収によって取得する費用を比較する事例です。
補完技術を組み合わせる:大阪有機化学/三宝化学研究所
公表事実:大阪有機化学工業と三宝化学研究所の2026年6月の提携発表では、分子骨格や製品形態の違いを生かし、原料・感光材等の共同設計と品質技術の連携を進める方針が示されました。取得対象は議決権33.8%であり、全株式取得ではありません。[8]
本稿の考察
異なる材料技術を組み合わせ、顧客に提案できる製品の範囲を広げる提携として捉えられます。共同開発や供給に関する具体的な権利は、出資に加えて契約で定める必要があります。
経営上の検討点
モノマーを得意とする企業と感光性材料を得意とする企業の組合せは、原料単品の供給から材料の共同設計へ関与を広げる可能性があります。協業の価値を実現する条件は、開発テーマ、成果の帰属、量産移行の役割、顧客への供給条件を具体化することです。
3.2 原料事業の取得と上流機能の取込み
レジスト原料事業へ展開する:三養グループ/NC Chem
公表事実:三養グループは2021年にNC Chemを取得しました。現在の三養NC Chemは、レジスト用ポリマー、PAG、モノマー、添加剤に加え、反射防止膜等の材料を製品領域として示しています。[63・64]
本稿の考察
三養グループは、主要原料を供給する企業の取得によって半導体材料事業を広げています。DIC/PCAS Canadaと比較すると、ポリマー製造を主とする企業の取得と、複数の原料を扱う企業の取得という違いがあります。
経営上の検討点
モノマー・ポリマー・PAGを扱う企業には、複数材料の要求を理解する技術蓄積があると考えられます。その価値を評価する際は、製品一覧に加え、共同開発実績や量産採用の対象を確認します。海外事例として、国内企業の取得対象探索にも比較軸を提供します。
完成レジスト側が上流材料機能を取り込む 富士フイルムと和光純薬工業
公表事実:富士フイルムは2017年2月27日~4月3日にTOBを実施し、既保有株式を含む所有割合を93.50%へ高め、4月21日に連結子会社化しました。同年10月17日、富士フイルムHD株式を対価とする三角株式交換で完全子会社化しました。現在の和光純薬はPAGとレジスト用ポリマー、低金属管理による供給を公表しています。[31・58・59・82・88]
本稿の考察
完成レジストを扱う富士フイルムグループが、PAG・ポリマーの合成・分析・品質保証機能を取り込む、垂直統合の側面を持つ取引です。買収対象にはヘルスケア・試薬等も含まれ、取得目的はレジスト原料の内製化だけに限られません。[31・58・59]
経営上の検討点
特定材料の事業取得と、多用途へ展開する化学企業の取得では、取得後に維持する事業と共有する技術基盤が異なります。上流機能を取得したい買手にとって、会社全体の取得と事業切出しを比較する材料になります。
3.3 開発体制の整備と合成技術の拡充
既存資本関係を強める:三井化学・三井物産/本州化学工業
公表事実:既存株主であった三井化学と三井物産は、共同TOBを実施し、本州化学工業は2021年9月に上場廃止となりました。現在の出資比率は三井化学51%、三井物産49%です。本州化学工業はレジスト用樹脂モノマー・添加剤を展開しています。取引資料では、開発・生産技術や顧客網を活用し、設備投資等の中長期施策を進める方針が示されています。[24・55・56・57]
本稿の考察
既存株主が経営への関与を強め、中長期の開発・投資を進める体制を整える再編です。レジスト原料事業は対象企業の事業の一部であり、非公開化は企業全体の成長施策として説明されています。
経営上の検討点
共同出資では、技術・製造に関する支援と販売・市場接点に関する支援を、各株主がどのように担うかが重要です。出資比率とともに、開発方針、設備投資、人材投入についての意思決定方法を確認します。
異なる合成技術を取得する:三菱ケミカル/Gelest
公表事実:三菱ケミカルは米子会社を通じてGelestの親会社の全株式を取得し、2020年10月1日に連結子会社化しました。Siケミカル・金属化合物等の知見と、自社のカーボンケミカル技術の組合せを取得目的として説明しています。2022年にはGelest、Lam Research、Entegrisが、EUVドライレジスト用プリカーサーの供給に関する協業を公表しました。[60・61・62]
本稿の考察
買収で取得した合成技術を、装置・工程を担うLam Researchと原料供給に関わるEntegrisとの協業につなげた事例です。ドライレジストでは気相原料から膜を形成するため、材料と装置・工程を組み合わせた開発・供給が事業化に関係します。[69]
経営上の検討点
取得時点の製品売上と、取得した技術を別用途へ展開する可能性を分けて評価します。後者は、協業先、対象工程、評価・供給条件を具体化することで事業計画に落とし込めます。
3.4 完成レジスト側の技術と市場の拡張
技術方式を取得する:JSR/Inpria
公表事実:JSRは出資関係を経てInpriaを完全子会社化し、MORを製品群へ取り込みました。買収後も、2026年にはInpriaとEntegrisの非独占的な特許クロスライセンスが公表されています。[3・4・16]
本稿の考察
MOR技術の取得後にも、他社の特許・材料技術との連携が続いています。特許の取得範囲に加え、他社権利との関係や量産供給に必要な機能を確認する必要があります。
経営上の検討点
技術方式の取得では、研究者、特許、材料設計の知見と、量産供給に必要な周辺機能を一緒に検討します。上流企業でも、未知の分子骨格や反応技術を取り込む買収には同様の観点が当てはまります。
地域・用途を拡張する:東京応化工業/MRT
公表事実:MRTは感光性材料等を開発・販売し、研究機関との関係を有しています。東京応化工業は欧州の顧客接点と提供領域の拡大を取得理由に挙げています。[6・7]
本稿の考察
取得価値には、材料技術に加え、欧州での顧客基盤や研究機関との開発関係が含まれます。地域・用途を広げる買収として、先端ノード向け売上以外にも着目できます。
経営上の検討点
取得対象の価値は、最先端工程への適用だけでなく、用途ごとの顧客基盤や地域での開発・販売接点にもあります。自社製品を対象会社の顧客へ展開できるか、既存顧客が取得後も取引を継続するかが、事業計画の検討点になります。
3.5 原料供給を支える既存の資本関係
ダイトーケミックスを巡る株式保有
ダイトーケミックスの2026年3月末の大株主には、東京応化工業4.86%、三木産業4.67%、大阪有機化学工業3.75%が含まれます。比率は自己株式を除く発行済株式に対する割合です。[72]
東京応化工業は、ダイトーケミックスを重要な調達先とし、製品開発・原材料調達・製造技術の相乗効果を保有目的に挙げています。ダイトーケミックスも東京応化工業と大阪有機化学工業の株式を保有し、取引関係の維持・強化を目的としています。三木産業は大株主であるとともに主要販売先に含まれます。[72・73]
本稿の考察
完成レジスト、上流材料、商社の関係を見る際には、買収だけでなく既存の株式保有も手掛かりになります。ただし、保有比率だけで共同開発の内容や供給上の権利は決まりません。既存の顧客・株主関係が、追加の提携や買収後の取引継続にどのように影響するかを確認する必要があります。
東京応化工業による原料企業の株式取得
東京応化工業の2025年12月期有価証券報告書では、東洋合成工業株式30,000株の新規取得と、東邦化学工業株式450,000株の追加購入が確認できます。両社は重要な調達先とされ、開発・調達・製造技術の相乗効果の維持・拡大が目的です。ダイトーケミックス株式数の増加は株式分割によるもので、追加取得とは異なります。[73]
本稿の考察
少数出資には、企業全体を統合する買収とは別に、調達・開発関係を継続する目的もあります。支配権、契約上の権利、設備投資への関与がどこまで必要かによって、出資と買収の使い方は変わります。
3.6 取得後の展開から読む事業化の条件
取得後の製品展開、共同開発、量産体制の整備は、取得した技術を事業へつなぐ過程を示します。以下に、各社の公表資料から確認できる展開を整理します。
| 取引 | 取得後に確認できる展開 | 経営上の示唆 |
|---|---|---|
| DIC/PCAS Canada | IDCへ改称。DICの設計技術と低金属・高純度の受託量産体制を一体で案内。[77] | 取得した製造基盤へ、買手の設計・営業機能をつなぐ。 |
| 三菱ケミカル/Gelest | 2022年にLam Research・EntegrisとのEUVドライレジスト原料協業を公表。[62] | 合成技術の取得に加え、装置・工程側との連携が用途展開を支える。 |
| JSR/Inpria | 2026年にEntegrisとの非独占的な特許クロスライセンスを公表。[16] | 技術を取得した後も他社権利・材料技術との接続が必要になる。 |
| 富士フイルム/和光純薬工業 | 現企業がPAG・ポリマー・受託合成を展開。[31] | 上流機能をグループ内に確保。半導体以外の事業も維持する。 |
| 大阪有機化学/三宝化学研究所 | 2026年6月の提携方針までを確認。[8] | モノマー・感光材の技術を組み合わせる共同開発を計画。 |
本稿の考察
取得した技術を事業へつなぐには、受託体制の整備、供給協業、ライセンスなどを組み合わせる方法があります。買収時の事業計画でも、取得後に誰と何を進めるかを具体化し、開発期間と追加投資を見積もります。
4 上流材料企業の機能と補完関係
4.1 国内企業の機能と補完関係
次の表は、国内上流材料企業の公表製品と機能を整理したものです。海外企業は次項の4.2で取り上げます。各社の製品と出所は、末尾の企業一覧に記載しています。
| 企業 | モノマー・ 特殊原料 | 樹脂・ ポリマー | 感光材・ PAG | 高純度 溶剤 | その他の 機能 |
|---|---|---|---|---|---|
| 大阪有機化学 | ● | — | — | — | — |
| 東ソー・ファインケム | ● | — | — | — | — |
| 本州化学工業 | ● | — | — | — | — |
| 田岡化学工業 | ● | — | — | — | — |
| セントラル硝子 | ● | ● | — | — | — |
| 丸善石油化学 | — | ● | — | — | 受託 |
| 群栄化学工業 | — | ● | — | — | — |
| 東邦化学工業 | — | ● | — | — | — |
| 日本曹達 | — | ● | — | — | — |
| ダイセル | — | ● | — | ● | — |
| 旭有機材 | ● | — | — | — | — |
| DIC | — | ● | — | — | — |
| 東洋合成工業 | — | ● | ● | ● | — |
| ADEKA | — | — | ● | — | MOR原料 |
| 富士フイルム和光純薬 | — | ● | ● | — | 受託 |
| サンアプロ | — | — | ●・▲ | — | — |
| みどり化学 | — | — | ● | — | — |
| 三宝化学研究所 | — | — | ●・▲ | — | 受託 |
| ダイトーケミックス | — | 技術 | — | — | 合成・重合 |
| 神戸天然物化学 | — | — | — | — | 受託 |
| KHネオケム | — | — | — | ● | — |
| 黒金化成 | — | — | — | — | 受託 |
●:公表製品・事業。▲:開発品を含む。技術・受託は製品販売と区別して記載。—:参照資料で該当する製品・技術の記載を確認できなかった項目です。
4.2 海外企業と受託合成企業の機能
海外上流企業の比較
| 企業・資本関係 | 公表されている上流機能 |
|---|---|
| 三養NC Chem 韓国・三養グループ | レジスト用ポリマー・PAG・モノマー・添加剤、BARC・SOH用材料。2021年にNC Chemを取得。[63・64] |
| Gelest 米国・三菱ケミカルグループ | Siケミカル・金属化合物等の合成技術。EUVドライレジスト用プリカーサーの供給協業。2020年にグループへ。[60・61・62] |
受託合成企業の位置付け
神戸天然物化学(KNC)は、顧客仕様に応じた機能性有機材料の少量合成から工業生産まで対応する受託企業です。半導体レジスト関連の取組みと、分析・金属不純物管理は決算資料で説明されています。2025年11月には、半導体・ディスプレイ関連材料を製造するFP-4棟の竣工を公表しました。レジスト原料の供給には、自社製品を販売するメーカーと、顧客から合成・精製・製造を受託する企業の双方が関わっています。KNCは後者の事例です。[36・74・75]
補完関係を評価する技術の単位
「有機合成に強い」「高純度化ができる」という説明だけでは、補完関係は評価できません。反応の種類、対象分子骨格、液体・粉体の取扱い、精製方式、分析感度、製造規模、ロット再現性まで分解する必要があります。
本稿の考察
企業の取得価値は、個別の技術の有無よりも、顧客から示された要求を、試作・評価・量産供給までつなげる工程全体にある可能性があります。研究者のノウハウが設備、標準作業、分析方法、品質記録へどこまで移転されているかが、事業としての再現性を左右します。
顧客認定と供給責任
顧客認定は、取得企業の他製品へ自動的に広がるものではありません。対象会社が認定された製品・工程・製造拠点、変更時の顧客への通知・再評価の要否を個別に確認する必要があります。また、試作品の性能と量産ロットの品質安定性は、別の評価対象です。
4.3 環境対応と供給網
PFASへの対応と材料開発
PFASはペルフルオロアルキル及びポリフルオロアルキル化合物の総称です。欧州では包括的な制限案の検討が続いており、既に適用される個別物質・用途の規制と、検討中の包括制限を分けて把握する必要があります。原料企業の評価では、製品の含有物質、製造時の使用・排出、顧客用途と代替開発の進捗を照合します。[79]
サンアプロは2025年6月、PFASを含まないガリウム系PAGのラインナップ拡充を公表しました。UV硬化等を対象とする開発であり、環境負荷の低減と材料性能の両立を目指す事例です。[34]
本稿の考察
環境対応材料の事業化では、対象用途に応じた感度や品質を確保し、顧客評価を経て量産へつなげることが必要です。買収・提携の検討でも、既存製品の利益とともに、代替材料の開発・評価費用、設備変更、採用までの期間を事業計画へ織り込みます。
供給拠点と顧客の調達方針
SEMIの2025年9月資料は、輸出管理や地域内生産の動きが供給網の地域配置を変える要因になると指摘しています。中国を含む各地域の顧客が現地調達・複数調達を進める場合、原料企業には販売機会と、現地生産・技術情報管理の負担が生じます。市場全体の成長と、個社が供給できる地域・顧客の範囲は分けて検討します。[78]
5 設備投資と契約連携の位置付け
買収後の外部連携による事業展開
三菱ケミカルによるGelestの取得と買収後2022年のEUVドライレジスト用原料に関する協業は、買収と供給・技術連携が時系列で組み合わされる事例です。JSR/Inpriaの買収後にも、Entegrisとの知的財産・材料技術に関する連携が公表されています。取得した技術を、装置・工程・供給の各機能へ接続することで事業化を進める考え方が読み取れます。[16・60・61・62]
自社の技術を量産能力へつなぐ
ADEKAは2025年10月、MOR用金属化合物の専用プラントを32億円で建設し、2028年4月の営業運転開始を予定すると公表しました。2026年8月にはPAG設備に約10億円を投じ、能力を約2倍へ増強、2028年9月の営業運転開始を予定すると発表しています。上流材料の事業拡張を、既存技術と自社の量産能力を生かして進める施策です。[10・11]
外部取得と内製投資の比較
| 手段 | 確保するもの | 主な判断点 |
|---|---|---|
| 自社開発・設備投資 | 既存技術の深化と供給能力 | 開発期間、認定取得、設備稼働までの時間、投資額、需要の確度 |
| 共同開発・供給契約 | 不足技術や特定材料へのアクセス | 成果帰属、優先供給、品質責任、契約終了後の継続性 |
| 特許ライセンス | 使用可能な技術・権利の範囲 | 対象用途・地域・期間、第三者権利、対価、製造ノウハウ |
| 少数資本参加 | 継続関与と協業の基盤 | 関与権限、情報管理、追加投資、出口と供給条件 |
| 事業・会社買収 | 技術・人材・顧客・設備の取得 | 統合負担、顧客継続、知財、設備更新、取得対価 |
本稿の考察
資本関係を持つこと自体が、優先供給や開発成果への権利を保証するわけではありません。必要な価値を契約で確保できるかを先に検討し、経営への関与や投資判断の一体化が必要な場合に、出資・買収の意義を評価します。
買収と設備投資は代替にも補完にもなる
設備だけが不足している場合には、買収より増設が合理的な可能性があります。一方、未知の合成技術や顧客との評価関係が不足している場合には、設備増設だけでは解決しません。買収後も、対象設備の更新や品質管理の追加投資が必要になるため、取得対価と追加投資を合算した事業計画が必要です。
6 上流材料企業の事業拡張に関する仮説
取引事例を踏まえ、上流材料企業が既存の技術・事業基盤を生かして事業を広げる際に、どのような機能を外部から補うかを整理します。
| 既存の技術・事業基盤 | 検討し得る補完領域 | 検討時の確認点 |
|---|---|---|
| モノマーの設計・合成・精製 | 感光材の設計、ポリマー合成、顧客との共同開発 | 自社のモノマー技術を生かし、顧客に提案できる材料の範囲を広げられるか |
| 樹脂・ポリマーの設計・重合 | 高純度化、分析・品質保証、量産設備、顧客との開発・評価関係 | 設計した樹脂を、顧客が求める品質で安定して量産・供給できるか |
| 感光材・PAGの設計・合成 | 新たな材料設計、精製・分析、顧客評価への対応、量産技術 | 顧客が求める性能と純度を満たし、試作から量産供給へつなげられるか |
| 金属化合物の合成・精製 | レジスト用原料の設計・評価、装置・工程との共同開発、品質管理・供給体制 | 既存の合成技術をレジスト用途へ展開し、顧客工程に適合する原料を供給できるか |
| 受託合成・特殊中間体の製造 | 顧客開拓・開発対応、量産設備、分析・品質保証 | 開発から量産までの役割と供給責任が明確で、継続的な受注につながるか |
既存技術と取得する機能の関係
補完する機能は、自社が事業を広げるうえで何が不足しているかによって異なります。モノマー企業が感光材やポリマーの技術を取り込み、提案できる材料を増やす方向もあれば、樹脂や特殊中間体を扱う企業が、量産設備・品質保証・顧客との開発関係を補う方向もあります。必要な機能を明確にしたうえで、買収、資本提携、共同開発、供給契約のどの方法で確保するかを検討します。
半導体売上が小さい企業の評価
本稿の考察
現在の半導体売上が小さくても、反応技術や精製技術が補完的であれば検討対象になり得ます。ただし、顧客採用までの費用と期間を織り込む必要があります。既存製品の利益と、半導体向けに展開する将来利益は分け、後者には技術評価・認定・量産化の到達条件を置くべきです。
開発・認定・量産化を伴う将来事業の評価は、技術・新規事業M&Aの事業性評価で詳しく扱っています。
受託企業の買収では、複数顧客との関係を維持するための情報管理と、競合取引への対応も必要です。顧客別の契約・意向と情報隔離の実効性を確認します。
6.1 売り手と提携先が維持したい事業価値
上流材料企業の売却・資本提携では、価格に加え、既存顧客への供給と技術情報の管理を維持できる相手かが重要です。事業承継で経営を引き継ぐ場合も、特定の技術者や経営者が担ってきた顧客との開発関係を、組織として継続できる体制が取得価値を支えます。
顧客契約と認定を継続する
株主の変更、事業譲渡、製造拠点・工程の変更では、顧客との契約上の取扱いが異なります。支配権変更時の通知・同意条項(チェンジ・オブ・コントロール条項)があるか、事業譲渡時に契約を承継できるか、認定対象の法人・拠点・工程を変えるかを個別に整理します。株式譲渡でも顧客の同意が常に不要とは限らず、認定も買い手の他製品へ自動的に広がるものではありません。
複数顧客への供給と技術情報を守る
完成レジストメーカーや競合する材料企業の傘下に入る場合、他の顧客が技術情報の流出や供給条件の変更を懸念する可能性があります。顧客別の情報アクセス、研究・製造記録、供給優先順位、価格決定と開発成果の帰属を具体化します。中立性は持分比率や社名の維持だけで決まらず、契約と日常の運営に表れます。
段階取得と取得後の運営
少数出資から追加取得へ進む場合は、技術評価や顧客採用を進める期間を確保できる一方、追加取得の価格・時期、役員選任、重要投資、情報開示、売却先の制約について合意が必要です。オプション付き出資では、行使条件と価格算定、評価未達時の対応を定めます。
取得後の統合(PMI)は、顧客通知、人材定着、品質保証、設備投資の意思決定を優先します。製造処方や分析法、認定済み拠点を早期に一律変更すると評価や供給に影響し得るため、統合する機能と継続する運営を顧客要求に沿って決めます。売り手が候補を比較する際も、供給継続の計画、開発・投資への支援、技術者の役割を提案条件に含めることで、価格と事業継続を併せて判断できます。
企業全体の取得と事業の切出しを比較する際には、事業売却・カーブアウト実務ガイドもご参照ください。
7 買収と提携の初期検討で確認する事項
買収検討の進め方は、買収・資本提携の実務ガイドで整理しています。
| 論点 | 初期段階で確認したい情報 |
|---|---|
| 製品・顧客 | 製品別用途、売上・利益、採用段階、顧客集中度、共同開発・長期供給契約 |
| 技術・知財 | 特許とノウハウの帰属、第三者権利、成果の共有条件、主要技術者への依存 |
| 品質・認定 | 不純物・金属・粒子の管理項目、分析法、ロット実績、認定対象拠点、工程変更時の手続 |
| 量産・設備 | 製品別実効能力、歩留まり、設備共用、原料調達、更新投資、増産時の制約 |
| 供給継続 | 複数拠点化、容器・物流条件、代替原料、災害・設備停止時の対応 |
| 収益・投資 | 正常収益、試作・量産の採算、維持・成長投資、運転資金、認定前支出 |
| 統合・契約 | 顧客の継続、競合取引、情報管理、共同開発の制約、取得後の人材定着 |
評価の組立て
既存事業は正常化したキャッシュフローを基礎に評価し、将来の半導体用途は別のシナリオで検討します。対象企業の説明上の「市場規模」ではなく、取得後に販売可能な製品、顧客の採用条件、量産時期、供給能力から売上を積み上げる必要があります。
基準シナリオは確認できる既存契約と合理的な採用見込みに基づきます。上振れシナリオでは新用途の採用や追加顧客を置き、下振れシナリオでは認定の遅延、設備投資増、既存顧客の離脱を検討します。同じ売上を対象会社の計画と買手のシナジーの双方に計上しないよう整理します。
経営者の皆様との初期協議に向けて
最初に確認したいのは、①今後拡張したい製品・顧客領域、②そのために不足する技術・品質・供給機能、③自社開発では不足する理由、④外部取得により確保したい権利・経営関与、の4点です。ここが具体化すると、取得対象の探索条件と、買収・提携の手段を比較できるようになります。
本稿では、上流ポリマー製造基盤の取得、モノマー・感光材等の共同設計、複数原料の供給企業の取得、既存資本関係の強化、Si・金属化合物等の合成技術の取得を確認しました。完成レジスト側の再編とも比較すると、自社の製品領域を広げる方法と、開発・投資・供給を進める体制を整える方法が見えてきます。必要な機能を製品・工程単位で整理することが、取得対象の探索と手段の比較につながります。
参考資料:企業別の製品・機能
国内の上流材料企業を中心に、公式の製品・技術・事業資料で半導体レジストとの関係を確認できる企業を整理しました。完成レジストメーカーは以下の一覧で別に示します。複数分野にまたがる企業は、確認できた範囲を併記しています。
モノマー・特殊原料と樹脂・ポリマー
| 企業 | 公表製品・機能/本稿での位置付け |
|---|---|
| 大阪有機化学工業 | レジスト用モノマー。分子設計・合成・精製。[18] |
| 東ソー・ファインケム | フォトレジスト用モノマー。特殊有機合成。[23] |
| 本州化学工業 | レジスト用樹脂モノマー・添加剤等。[24] |
| 田岡化学工業 | 2,3/3,4-キシレノール。レジスト用原料。[25] |
| セントラル硝子 | 高純度フッ素系モノマー・ポリマー。[26] |
| 丸善石油化学 | レジスト用ポリマー。受託製造を含む。[27] |
| 群栄化学工業 | ノボラック、PHS、アクリル系等のレジスト材料。[28] |
| 東邦化学工業 | PHS系ポリマー・共重合体。[29] |
| 日本曹達 | VPポリマー(ポリパラヒドロキシスチレン)。[32] |
| ダイセル | ArF/EUV用ベースポリマー「セルグラフィー」。高純度溶剤も展開。[33・38] |
| 旭有機材 | フェノール誘導体等の電子材料・低金属管理技術。[15] |
| DIC | 半導体レジスト用ポリマー。PCAS Canada取得を通じて製造基盤を拡張。[5] |
PHS:ポリヒドロキシスチレン。樹脂原料の種類は露光方式と材料設計によって異なります。掲載順は市場シェア順位を表すものではありません。
感光性材料・PAG・金属化合物
| 企業 | 公表製品・機能/本稿での位置付け |
|---|---|
| 東洋合成工業 | PAC・PAGと化学増幅型レジスト用ポリマーを製造・販売。高純度溶剤も展開。[14・30] |
| ADEKA | 先端レジスト向けPAG、MOR用金属化合物。両分野で設備投資。[10・11] |
| 富士フイルム和光純薬 | レジスト用PAG・ポリマー、受託合成。低金属管理による供給。2017年の和光純薬工業取得でグループへ。[31・58・59] |
| サンアプロ | PAG製品と半導体レジスト用途への展開。[34] |
| みどり化学 | 電子・半導体関連PAG等を製造。会員企業紹介に基づく。[51] |
| 三宝化学研究所 | NQD感光性材料・原料、i線用酸発生剤。PAG開発品も掲載。受託製造にも対応。[8・35] |
受託合成・製造と高純度溶剤
| 企業 | 公表製品・機能/本稿での位置付け |
|---|---|
| ダイトーケミックス | フォトレジスト関連材料の合成・重合・不純物管理技術。[17] |
| 神戸天然物化学 | 半導体レジスト関連の受託合成・製造。金属不純物管理と分析技術、FP-4棟による量産基盤の拡充。[36・74・75] |
| KHネオケム | フォトレジスト原料となる高純度溶剤。PM-P/PMA-P等。[37・39] |
| 黒金化成 | KHネオケムグループ。先端半導体を含む電子材料の受託製造。[39] |
溶剤分野には、上表のKHネオケムに加え、東洋合成工業、ダイセルも含まれます。受託製造企業の非公開製品・顧客と、各製品の量産採用範囲には公表上の限界があります。企業を比較する際は、公開された技術と実際の供給製品・採用実績を照合する必要があります。
完成レジストメーカー:原料の需要側を理解する
| 企業・グループ | 確認できた製品領域 |
|---|---|
| JSR/Inpria | 完成レジスト、MOR。InpriaはJSRグループ。[3・4] |
| 東京応化工業/MRT | 半導体前・後工程用レジスト。MRTは同グループ。[6・7・19・20] |
| 信越化学工業 | i線・KrF・ArF・EUV等のレジスト。[40] |
| 住友化学 | ArF・EUV等の半導体レジスト。[41] |
| 富士フイルム | g/i線・KrF・ArF・電子線・EUV等。[42] |
| Merck | AZブランド等のリソグラフィ材料・レジスト。[44] |
| Qnity Electronics | g/i線・KrF・ArF・EUV等。旧DuPontの電子材料事業。[45・46] |
| Dongjin Semichem | 半導体用フォトレジスト。[47] |
| 日本化薬グループ | SU-8等、MEMS・パッケージ等の構造形成用レジスト。[43] |
| ナガセケムテックス | g~i線向けリフトオフ用等のレジスト。[48] |
| 日本ゼオン | 電子線レジストZEPシリーズ等。隣接する微細加工材料。[49] |
完成レジストの全企業が、同じ露光方式・用途で競合するわけではありません。原料需要の把握には、先端ロジック向け、成熟工程向け、パッケージ・構造形成向け等の違いが重要です。また、完成品と原料の両方を扱う企業・グループもあります。
関連材料と一覧の範囲
反射防止材・下層膜は、レジストの配合成分とは別に塗布する関連材料です。日産化学はARC等を展開し、同分野への進出ではBrewer Scienceからのライセンスを活用しています。本稿では、上流原料と区別して周辺領域として位置付けます。[50]
本一覧は国内の事業拡張を検討するための企業整理であり、海外上流企業は取引の比較対象として別に示しています。非公開の受託製品や研究段階の材料を含む全世界の供給企業名簿ではありません。用途別の市場シェアを示す資料とは区別しています。
出所一覧
確認基準日:2026年10月7日。取引時点の説明と現在の製品説明を区別して参照しています。
出所一覧を開く/閉じる
- [1]ASML|5 things you should know about High NA EUV lithography(2024年1月25日)
- [2]ASML/TSMC|Large-Format Photomasks for High NA EUV共同発表(2026年9月8日)
- [3]JSR|JSR Agrees to Acquire EUV Pioneer Inpria Corporation(2021年9月17日)
- [4]JSR Micro|JSR Closes Deal to Acquire EUV Pioneer Inpria Corporation(2021年11月(本文))
- [5]DIC|DIC Acquires Photoresist Polymers Manufacturer PCAS Canada(2023年6月1日)
- [6]東京応化工業|ドイツmicro resist technology GmbH社の完全子会社化(2025年2月25日)
- [7]東京応化工業|関係会社
- [8]大阪有機化学|資本業務提携に関するお知らせ(三宝化学研究所)(2026年6月1日)
- [9]富士フイルム|Entegris社の半導体用プロセスケミカル事業の買収完了(2023年10月2日)
- [10]ADEKA|次世代EUVリソグラフィ向けMOR用金属化合物の新プラント(2025年10月31日)
- [11]ADEKA|先端フォトレジスト向け光酸発生剤の生産能力を増強(2026年8月20日)
- [12]JSR|ヤマナカヒューテックの完全子会社化(2024年5月16日)
- [13]JSR|ヤマナカヒューテックの全株式の取得を完了(2024年8月2日)
- [14]東洋合成|中期経営計画Beyond500(2022年5月11日公表)
- [15]旭有機材|電子材料・フェノール誘導体等の製品説明
- [16]JSR|JSR/InpriaとEntegris、EUV向けクロスライセンス契約(2026年5月27日)
- [17]ダイトーケミックス|独自技術と強み
- [18]大阪有機化学|統合報告書2024・電子材料事業(2024年)
- [19]東京応化工業|半導体用材料〈前工程〉
- [20]東京応化工業|半導体用材料〈後工程〉
- [21]富士フイルム|半導体材料・製品領域
- [22]JSR|用語集・フォトレジスト
- [23]東ソー・ファインケム|電子材料・フォトレジスト用モノマー
- [24]本州化学工業|電子材料用途・レジスト用材料
- [25]田岡化学工業|レジスト用原料
- [26]セントラル硝子|フォトレジスト材料
- [27]丸善石油化学|フォトレジスト事業への取組み
- [28]群栄化学工業|フォトレジスト用レヂトップ
- [29]東邦化学工業|PHS及びその共重合体
- [30]東洋合成工業|感光材事業
- [31]富士フイルム和光純薬|技術情報・レジスト材料
- [32]日本曹達|機能性化学品事業・VPポリマー
- [33]ダイセル|電子材料・セルグラフィー
- [34]三洋化成/サンアプロ|PFASフリーPAG開発(2025年6月24日)
- [35]三宝化学研究所|製品情報・半導体材料
- [36]神戸天然物化学|機能性材料・受託合成
- [37]KHネオケム|電子材料事業
- [38]ダイセル|半導体用高純度溶剤
- [39]KHネオケム|社会貢献活動・エレクトロニクス
- [40]信越アステック|フォトレジスト・信越化学グループ製品
- [41]住友化学|半導体レジストの技術開発拠点(2026年4月9日)
- [42]富士フイルム|フォトレジスト
- [43]日本化薬|感光性レジスト/当社の技術
- [44]Merck|リフトオフ用レジスト
- [45]Qnity Electronics|Lithography Photoresists
- [46]DuPont|Qnityの分離完了(2025年11月3日発表)
- [47]Dongjin Semichem|Semiconductor materials
- [48]ナガセケムテックス|フォトレジスト
- [49]日本ゼオン|電子線レジスト
- [50]日産化学|半導体材料
- [51]日本試薬協会/みどり化学|会員企業紹介・電子/半導体関連薬品
- [52]imec|High-NA EUV lithography: the next major step in lithography
- [53]imec|CARのHigh-NA EUV適用に関する研究成果(2026年9月8日)
- [54]imec|The case for High NA EUV
- [55]三井化学|本州化学工業への共同TOB開始予定(2020年11月11日)
- [56]本州化学工業|沿革・2021年の非公開化
- [57]三井化学|国内グループ会社・本州化学工業の出資比率
- [58]富士フイルムHD|和光純薬工業の完全子会社化に関する株式交換(2017年8月30日)
- [59]富士フイルム和光純薬|沿革・2017年の完全子会社化
- [60]三菱ケミカル|Gelest買収の決定と技術基盤の拡充(2020年4月30日)
- [61]三菱ケミカル|Gelest買収完了(2020年10月2日)
- [62]Entegris|Lam Research・GelestとのEUVドライレジスト原料協業(2022年7月12日)
- [63]三養グループ|100周年公式沿革・2021年NC Chem取得
- [64]三養NC Chem|Materials for Semiconductor Photo Process
- [65]Merck|2014年公式ニュースアーカイブ・5月2日AZ買収完了
- [66]Merck|Next Generation Lithography(2016年2月15日)
- [67]日本化薬|公式沿革・2008年MicroChem取得
- [68]JIC|JSRの非公開化に関する一連の手続完了(2024年6月27日)
- [69]Lam Research|What Is Dry Resist(2026年6月18日)
- [70]JSR|Inpria完全子会社化・合意した事業価値(2021年9月17日)
- [71]JIC|JSR公開買付け開始予定と投資目的(2023年6月26日)
- [72]ダイトーケミックス|2026年3月期 有価証券報告書
- [73]東京応化工業|2025年12月期 有価証券報告書 政策保有株式
- [74]神戸天然物化学|2024年3月期 決算補足説明資料 19ページ(2024年5月13日)
- [75]神戸天然物化学|エレクトロニクス関連向け製造設備の竣工(2025年11月27日)
- [76]三井化学|本州化学工業株式の公開買付け開始(2021年5月14日)
- [77]DIC|半導体先端材料用ポリマー受託ソリューション
- [78]SEMI|Building the Future AI Investment Equipment and Materials Market Outlook(2025年9月)22・27・28ページ 市場予測は当時の見通し
- [79]欧州委員会|PFAS pollution 包括制限案と個別規制
- [82]富士フイルム|和光純薬工業公開買付け結果(2017年4月4日)
- [83]JSR|Annual Report 2024 公開買付け価格と期間
- [84]Merck|AZ Electronic Materials買収完了(2014年5月2日)
- [85]SEMI|2025年半導体材料市場実績(2026年5月12日)
- [86]富士フイルム|和光純薬TOB開始予定(2016年12月15日)20頁:予定買付代金の定義
- [87]富士フイルム|和光純薬TOB開始(2017年2月24日)21~22頁:株数と予定代金
- [88]富士フイルムHD|2018年3月期有価証券報告書
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